る。
「あっちゃー、しばらく封印していた《鬼の金剛》が目覚めちゃった。これは駆逐艦の子達死んだわ」
「冷静に言ってる場合じゃないでしょ!?」
冷や汗を流しながら苦笑いするの長門を叱責する陸奥の足もガクガクに震えていた。
金剛は竹刀を構え、近づいてくる駆逐艦達に冷笑する。その態度に駆逐艦達はさらに激怒して、速度を上げる。
「みんなやめてくださいッ!」
大和の悲痛な声は駆逐艦達の咆哮の中に消えていった。
そして、鬼の金剛が竹刀を振り上げた――
「やめろよ」
その小さな声は、不思議と全てに流れた。
駆逐艦達は立ち止まり、金剛も竹刀を下ろす。そして、一人の人物にその焦点を合わす。
「しょ、少尉?」
大和が見上げるのは、いつもは優しい笑みをしている翔輝ではなかった。感情を殺した、冷徹な、冷たい瞳だった。
翔輝は駆逐艦達を睨み付ける。刹那、駆逐艦達がビクリと震え、一歩引く。そこに流れるものとは違う意味の恐怖だった。
例えるなら金剛は殺気をみなぎらした恐怖。駆逐艦達は怒りの炎を燃え上がらせた恐怖。そして、翔輝は冷たい、絶対零度の寒さを秘めた恐怖だった。
全員が豹変した翔輝を見て硬直している。
翔輝は全方位を睨み付けると、踵を返して歩き出した。
「しょ、少尉???」
大和が不安そうな瞳で翔輝の裾をそっと掴んだが、すぐに振り払われた。翔輝は艦魂達を一瞥し、冷たい瞳でこう言った。
「金剛さんの事、何も知らないで責めるんじゃない」
そう言い残すと、翔輝は艦内に消えて行った。
残された艦魂達は翔輝の冷たさに頭が冷えたのかようやく落ち着き、駆逐艦や巡洋艦達もその場に座り込む。
金剛は軍服を元に戻すと、何事もなかったように消えた。
呆然としている大和の肩を、武蔵はそっと触れた。
武蔵は翔輝の消えたドアを、いつまでも見詰めていた。第七章 第十三節 戦姫達の涙は頬を流れて
「待てよ!」
礼儀も何にもない直球勝負な声に翔輝が振り向くと、ポニーテールの髪を揺らした少女が立っていた。
「榛名さん?」
「さんはいらねえ。それよりテメェに聞きたい事があんだけど」
「何?」
榛名は目を細くした。その瞳には刀のような鋭さを秘められていた。
「テメェ、姉貴の何を見た?」
「???」
「答えろよな。答えなきゃ力ずくで聞き出す」
榛名は拳を構える。そんな彼女に、翔輝は小さなため息を零す。
「別に言わない訳じゃないよ。ちゃんと言うよ?」
「けっ、ならさっさと言いやがれ」
榛名の礼儀もクソもない言い方に、翔輝はため息する。
「君は失礼だな」
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「けっ、悪いけどテメェよりは長く生きてんでな。失礼もクソもねぇ」
「そりゃそうか」
確かに榛名は外見はともかく実年齢は年上である。
翔輝の軽い態度に榛名はイライラする。
「ほらッ! へらへら笑ってねえでさっさと言いやがれ!」
「わかった! わかったからヘッドロックはやめて!」
翔輝は洗いざらい暴露した(させられた?)。金剛の真の姿の事、自分の過去と現在、全てを榛名に話した。その間榛名は「ふーん」とか「あっそ」と適当な相槌をしているが、その瞳はずっと翔輝に向けられていた。
「それだけの事だよ」
ようやく説明を終えると、榛名は「あーッ!」と叫び、めんどくさそうに頭をバリバリと掻きむしる。
「ったくッ! 姉貴も少しは俺を信用しろっつーの!」
そう叫ぶと、榛名は寂しそうな表情を浮かべてうつむく。
「もう、たった二人になっちまった姉妹じゃねえか」
「榛名???」
そこにはいつも元気で前向きな榛名の姿はなかった。あるのは、二人の姉妹を失い、悲しみにくれる少女の姿だった。
「ったく、姉さんのバカ???